けんぞーの毒独読書第7冊
「甘くとろけるのは男の子だけじゃないんだから」
2005/07/13(水) 配信
「あんたまだ生きてるんでしょう? だったらしっかり生きて、それから死になさい!」
…はい、そうします。
葛城ミサトに勇気づけられる毎日に、そろそろ疑問を抱き始めたけんぞーです。最近は本も読まんとマンガばかり買い漁る、受験戦争から脱落した落ちこぼれのような読書ライフを送っていますが(いや、マンガは素晴らしいヨ)、敬愛する作家の1人・山田詠美さまの新作を前に跪きました。無条件降伏です。どうぞ土足で侵略して!(詠美、戸惑うわ)
■風味絶佳
若いボーイフレンドを隣に乗せ、真っ赤なカマロを駆る祖母・不二子と、サーヴィスステイションで働きグランマと呼ぶことを強要される孫の触れ合い『風味絶佳』を含む、肉体労働者たちの周辺に在る愛を描いた6編から成る短編集。
どうしよう。あのエイミーさまの作品について書くだなんて無謀すぎ。調子乗りすぎ。でもまあ元から、僕みたいな者がしたり顔でレビューする不愉快なエッセイなので、今さらですよね。あはは。誹謗中傷バッチこ〜い! 嘘。ヤメテ。ワタシ、痛イノ、キライ。…と、長々言い訳ですが、この6編の醸す妙味があまりに舌の上でままならないので、書いてみることにします。
まず注目すべきは、鳶職やら引っ越し屋といった肉体労働者たちの豊かな描写。もうガテン系ってだけでゲイ的萌えポイントではありますが、筆者のあとがきに「肉体の技術をなりわいとする人々に敬意を払って来た」とあるとおり、彼らの飾り気のない仕事ぶりを丁寧に愛でるような筆致は、文系オカマには眩しすぎ! 昼間は足場を組んで夜には豪快なセックスをかまし、ときに女を殴る元ヤン鳶職の雄太(『間食』より)も、羽虫湧く汚臭たちこめた汚水槽へ誇らしげに潜っていく清掃作業員の裕二(『アトリエ』より)も、ゲイが漂わせ得ない男臭をふんだんに纏っているのです。
そしてそんな男たちを取り巻く女衆が、また素晴らしい。とにかくグランマ(『風味絶佳』より)ですわ。若い男を伴い派手な車を乗り回す老女。その正体は、横田基地の側で米兵相手にバーを営む、御歳70歳! オカマ、シビレます。「甘くとろけるのは女の子だけじゃないんだから」と、失恋した孫に人生を説く達観ぶりは、老舗ゲイバーのママを彷彿とさせるものがあり、実に店に通ってみたくなる。「こんな良い酒は、子供には飲ませられない」と身の程知らずなオーダーを叱ってもらいたくなる。
そうした風情ある人物たちの物語から思うのは、人生は素敵ってこと。苦しいのも寂しいのも悲しいのも、その人だけの味わい深い人生で、えも言われぬ風味を醸すものだということ。振られたって、ヤケ酒したって、友達に絡んで捨て置かれたって、潰れて道路で倒れたって、翌朝財布をなくしてたって気にすんな(一部、身に覚えアリ)! 「そのたたずまい。まさに絶佳」なのだからーらーらー…。
風味絶佳
山田詠美/文藝春秋/ISBN:4163239308
一覧に戻る
bjマガジンに戻る
トップに戻る
2011 TERRA
PUBLICATIONS