けんぞーの毒独読書第6冊
「愛が足りねーんだよ、愛が」
2005/06/01(水) 配信
脳内友達の1人や2人と友情を育む甲斐性くらい、僕にだってあります。ときどき恋愛的な駆け引きまで持ちかける、ニクイあんちきしょう共…。はい、孤独アピールもそこそこに、やっつけ感漂う6冊目。紹介するのは〜『阿修羅ガール』!
■阿修羅ガール
好きでもないクラスメート・佐野と一夜を共にした、現役女子校生のアイコ。翌日、佐野は失踪し、さらに両親の元に切断された指が送られてきたという。アイコは、思いを寄せる金田陽治とともに、佐野の行方を追うが…。
“減るもんじゃねーだろとか言われたのでとりあえずやってみたらちゃんと減った。私の自尊心。返せ。”(本文引用)
の冒頭から始まるアイコの屈託のない…というよりも、ぶっちゃけ過ぎの口語調で語られる、軽妙な文体に退かれる方もいるようですが、僕はもちろん持ってかれました(ちなみに隣のデスクでブヒブヒ言ってる本誌編集・大和も)。アイコ、かっこい〜。しかし、この小説かなりの曲者。佐野の探索と並行して、三つ子バラバラ殺人犯・グルグル魔人の跳梁に不穏な空気が濃くなる中、アングラネット掲示板で火が点いた中学生狩りが横行し、ついには「アルマゲドン」(いわゆる暴動)が勃発! アイコの住む街は、さながらカオス渦巻く“魔界”と化します。さらに、アイコのピュアな恋心が乗っかって、もう何がなにやら…。一見、佐野の失踪事件を主軸としたミステリーかと思いきや、描かれているのは陰惨な事件の絶えない、破綻をきたした世界の“愛の足りなさ”だったり、またその一端を担う自己との対峙だったり…。はっきり言って、けんぞーの読解力では、この深みのある寓話を完全に理解できたのか、怪しいところです。まったくの極私的主観でもってさえ消化できず、モヤモヤしてますよ。
でもまあ真芯を捉えきれずとも、オカマ的に興奮できる要素も各所に散りばめられていて、思わずニンマリ。佐野による顔射を避けて顔を蹴り上げるアイコの勇姿や、その一夜を巡って同級生に女子トイレでシメられる場面(あんたさー、何で呼ばれたか判ってる?)や、三つ子を惨殺された夫婦のやけくそ日中野外ファック(呼びなさい、よ(警察を)。好きに、しなさいよ)など。さらには男性であるグルグル魔人のフェラチオしたい願望(セクシュアリティは不明)まで飛び出す始末(はっはっは。どうですか、ここは一つフェラチオでも)。とにかく暴力とセックスが満載で、これでドラッグでもあればロックンロールじゃん! ワオ!(安い) てな具合。
けれど、そんなむせるような悪意の中、アイコが金田に寄せる想いが可愛らしくキラリ。
“相手のこことかそことか(中略)が好きになるんじゃなくて、相手の中の真ん中の芯の、何かその人が持っている核みたいなところを無条件で好きになるんだろうと思う”(本文引用)
と述べるくだりに、ひどく納得です。顔がイケる、体がタイプ、性格が合う、などは言わば後付で、突き詰めると「〜だから」という理由はなくて、その人の中枢(命と言い換えても)を好きになるんじゃなかろうかと思うのですよ。なんつって経験浅いくせに悟ったようなこと言ってんな〜(アイコ口調)。
全体的な構成としては、アイコの魔界体験から始まって、脳内友達・シャスティンの寓話を挟み、グルグル魔人の視点を通過し、3つのお話が収束され思わぬ終局へ流れ着きます。キーワードは、3つの顔に6本の腕を持った悪神“阿修羅”。文庫本も出ているので、どうぞ読んでみて! けんぞーもまた読み返そっと。
阿修羅ガール
舞城王太郎/新潮社/ISBN:4104580015
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