けんぞーの毒独読書第5冊
「笑うなら笑え」
2005/04/13(水) 配信
 桜ももう散り始めていますね。あの透き通る桃色を見るにつけ、般若の面を思い浮かべるのは僕だけでしょうか? そんなセンチメンタルなテンション(どこかだ)で紹介する5冊目は、第41回文藝賞を射止めた、山崎ナオコーラ著『人のセックスを笑うな』。
■人のセックスを笑うな
 美術系の専門学校に通う19歳のオレと、39歳の既婚講師・ユリの危うい恋。20歳もの年の差を抱えたロマンスの行方は…?
 まずは、「ナオコーラ」に突っ込んどきましょうか。センセーショナルなタイトルとセットで目に飛び込んでくる、著者のペンネーム。本を手にした途端にただ者でない感が漂い、意味もなく音読したくなる語呂が魅力的ですが、恐らく本名が「ナオコ」だと予想すると、それ狙いすぎだろ。しかし、文藝賞受賞はタイトルとペンネームのインパクトじゃないの?っていう辛口批評も飛び交うくらい話題をさらったのだから、ネタだとしたら報われているのでしょう。
 そして本編はというと、なんのことはない年の差カップルの色恋沙汰で、フケ専19歳の少年が美しくもないオバハンに振り回されるという、ブスババア万歳な内容(やや誤解)。少年がエリの手入れしてない剛毛や、干上がってガサガサの肘や踵、申し訳なさそうに弛んだ下っ腹を、愛でて愛でて愛でた末に捨てられる、男女間ではなかなかアリエナイお話だけど、ゲイ的にはどうよ? 年上兄貴に入れあげてボロ雑巾のように捨てられた過去を持つオカマの人ー、手ぇ挙げてー。っはーい(笑顔で)!
 とまあ顛末だけ追っていくと、どんな泥沼劇かと思われますが、実際はサラッとしていて、少年の淡々とした語り口と一途な想いには心動かされます。
“もし神様がベッドを覗くことがあって、誰かがありきたりな動作で自分たちに酔っているのを見たとしても、きっと真剣にやっていることだろうから、笑わないでやってほしい”(本文引用)
 40前のブス女とセックスするなんて、端から見たらマニアなビデオですよ。けれど本人たちはいたって真面目で、祈りにも似た清らかな感情を交換し合ってる。それは当人にしか分からないことかもしれないけど、真剣に誰かと向き合うことを外から笑ってはいけないと思うんです。「ちょっと聞いて〜、この間すんごいブス同士がホテルから出てくるの見ちゃったの〜。あんなのがセックスしてるなんてキーモーイ〜」とか言ってるアナタを、けんぞーは静かに呪います(極端)。1ページあたりの文字量も少なく、難なく読める1冊で、さあっと胸を吹き抜けて、微かに切なさを残してくれます。
 まるで春風のように。 ※物語の舞台は冬だぞ!
人のセックスを笑うな
山崎ナオコーラ/河出書房新社/ISBN:4309016847

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